失業保険を計算する場合、必要となる情報に賃金日額というものがあります。
賃金日額がどういうもかを一言で表現すると、
『過去6ヶ月間にもらった賃金の総額を180で割った数字』
といえますが、
これはあくまで普通のサラリーマンが6ヶ月間健康に働いた場合の数字であって、一部の人には当てはまりません。
その『一部の人』とは、以下の人のことを指します。
- 過去6ヶ月の間にひと月の賃金支払基礎日数が11日未満の月がある方
- 時給制・日給制・出来高払い制などで働いている方
- 育児や介護などの必要があったため、勤務先で所属する部署が変わり給料が下がってしまった方
- 働き先の都合で労働時間の短縮などがあって給料が下がってしまった方
この記事では、賃金日額をできるだけ正確に計算する方法をご紹介いたします。
賃金支払基礎日数とは、「支払われた賃金の根拠となった労働日数」のことをいいます。欠勤日の多い月がある方は計算に大きく影響する場合があります
今回は上記項目2〜4に当てはまる方の賃金日額については触れていません。
(長文になりすぎるからです。スミマセン。)
一般のサラリーマンの賃金日額を計算する
『過去6ヶ月間にもらった賃金の総額を180で割った数字』とは、簡単に表現すると以下の様な計算式になります。
賃金日額 = 過去6ヶ月の賃金の総額 ÷ 180
賃金締切日以外の日に退職したときに受ける月の賃金は、上記の賃金の計算に含めません。賃金締切日の翌日から賃金締切日までの日数がまるまる1カ月ある月(これをハローワークの方は「完全月」と言ったりします。)を1カ月と数えます。(後述します)
この計算式の中で賃金に含めるもの、含めないものの判断が難しくて疑問が多いものは次のものだと思います。
-
賃金に含めるもの
- 残業手当・営業手当など一般の社員がもらっているもの
- 通勤手当
- 住宅手当
-
賃金に含めないもの
- 退職金
- 解雇予告手当
- ボーナスやインセンティブなど(いわゆる賞与と呼ばれるもの全般)
- 結婚祝い金、弔慰金など
- その他
- 含めないもの全般に言えることですが、『普段からもらっていない賃金』については賃金日額の計算に含まれないと思って下さい。
これは、同じ会社の社員でも、もらえる人・もらえない人、運がよかった人・運が悪かった人など、そういった不確定な要素を含む賃金の格差をなくさなければならないからです。
- 含めないもの全般に言えることですが、『普段からもらっていない賃金』については賃金日額の計算に含まれないと思って下さい。
これらの他にも『これは計算に含めるのかな?含めないのかな?』と疑問に思われるものについては、
同じ会社の労働者に平等に支給されているもの
こういう基準で考えて判断してみるとよいかと思います。
一般のサラリーマンの方であればここまでの内容だけで賃金日額は計算できます。
賃金日額が計算できましたら、関連記事:『失業保険の給付金を計算する』で失業保険の総支給額がいくらになるのかを計算してみて下さい。
ここから先は、例外を含んだ場合の知識になります。
例外に当てはまりそうもない方はここから先の知識はほぼ不要となりますので、読み飛ばしてください。(混乱の素です)
以下を読み続けるには、前提知識として算定対象期間、被保険者期間、被保険者期間という3つの期間を知っておかなければなりません。
『全く知らない (。・x・)!』という方は関連記事:失業保険受給資格に出てくるいろいろな期間って何?をご一読下さい。
賃金日額の正確な計算方法
賃金日額を計算するには以下の計算式を使います。
賃金日額 = 最後の6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180
賃金総額として扱われるのは『離職前の被保険者期間内にある最後の6ヶ月分の賃金総額』です。つまり、完全月で6ヶ月分の賃金です。
これらについては文章だけで細かく説明するよりも具体例を使って紹介した方が分かりやすいと思いますので、具体例でご紹介します。
具体例
- 登場人物:Aさん
- 22歳 女性
- 職業:会社事務(つまり一般被保険者)
- 2003年4月1日就職
- 2005年3月15日退職
- 賃金締切日は末日
- 月の給料は30万円
- ひと月あたりの労働日数は平均すると22日ですが、こういった賃金の社員の賃金支払基礎日数はカレンダー通りの日数を数えます。(4月なら30日、5月なら31日、2月なら28日など)
- 2004年10月に病気で20日欠勤(出勤2日分を1日1万円の日給として支給)
- 2004年11月に病気で15日欠勤(欠勤15日分の給料を引かれた)
- 2005年02月に病気で18日欠勤(欠勤18日分の給料を引かれた)
- 2005年03月の出勤日数は12日(出勤12日分を1日1万円の日給として支給)
- 欠勤した日に対して有給は使わなかった
- 11月と2月の欠勤は1日あたり1万円の減給
- 離職前9ヶ月間における基礎日数と給料
-
年度 2004年 2005年 月 7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
給料 30万
30万
30万
2万
15万
30万
30万
12万
12万
基礎日数 31日
31日
30日
2日
15日
31日
31日
10日
12日
-
それでは早速この条件で賃金日額を計算してみましょう。
まず一番最初に完全月がどの月にあたるのかを数えます。
今回の場合は、3月15日に退職しているので、
3月1日から3月15日はまるまる1カ月ないので完全月ではない
2月1日から2月28日は完全月。賃金は12万円(30万円−欠勤18日分)を支給。2月のカレンダーは28日であるため、賃金支払基礎日数は10日(28日−18日)
1月1日から1月31日は完全月
・・・
という感じで区切ります。
そして、その完全月である月の中で賃金日額の計算に使われる月を考えます。
これをまとめると以下の表のようになります。
| 月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 給料 |
30万 |
30万 |
30万 |
2万 |
15万 |
30万 |
30万 |
12万 |
12万 |
| 賃金支払基礎日数 |
31日 |
31日 |
30日 |
2日 |
15日 |
31日 |
31日 |
10日 |
12日 |
| 条件適合 |
○ |
○ |
○ |
× |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
| 計算対象月の数 |
6 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
表の中の計算対象月の数とは、賃金日額の計算式に登場した『最後の6ヶ月間』を表現しています。
さて、賃金日額の計算に使われる賃金は
『完全月であり、賃金支払基礎日数が11日以上ある月の直近の6ヶ月間の賃金総額』
でした。
これにより、賃金総額は以下のようになります。
賃金総額 = 1月、12月、11月、9月、8月、7月の給料の合計額
=165万円 ・・・(値1)
ここで重要なのは、給料が下がっている11月の給料が含まれていることです。
11月が含まれると平均の賃金は下がってしまいますので、やはりAさんはハローワークに次のことをお願いするかもしれません。
Aさん:『11月の給料が普通より下がっているから7月より前の給料を計算に使ってもらえませんか?(それを使ってもらえると30万円×6カ月で180万円になる。)』
ハローワーク『ダメです』(即答)
こんなお願いは通用しません。
以上の結果、Aさんの賃金日額は以下の通りとなります。
賃金日額 = (値1) ÷ 180 = 9,166円(1円未満切捨て)
この賃金日額を使って失業保険の日額(基本手当)が決定するわけです。
賃金日額の計算は以上の通りです。
さて、この文章の中ではいくつか疑問に思われた点があるかと思います。たとえば、なぜ10月は日給で計算しているのに、11月は欠勤控除なのか、とか、平均して22日しか出勤日がなのになぜ賃金計算基礎日数はカレンダーの日数でカウントするのか、とかです。
実はこの問題は、少々複雑な問題です。
上記の例は、私が現実に顧問をしている会社を退職する従業員の場合を例にしておりますが、会社が違えば賃金計算方法が全く違うように、会社によっては上記とは違う計算結果になります。
つまり会社によって賃金日額が変わる可能性があるのです。
では、どうすれば本当に正確な賃金日額が計算できるのか・・・。
結論は、就業規則に記載されている賃金規程を読むしかありません。
もしくは回避策として、欠勤せずにしっかり働いて辞めるという方法があります。
以上のようなこともありますので、あまり複雑な問題はここでは表現し辛いということで、これ以上のことは省略させていただきます。(スミマセン)